利益相反:「日本小児救急医学会臨床研究のCOIマネージメントに関する指針」Q&A
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「日本小児救急医学会臨床研究のCOIマネージメントに関する指針」Q&A
1.臨床研究に係るCOI(利益相反)について
- Q1 産学連携で臨床研究を行う場合、何故、COIが問題になるのですか?
- A1 医学研究の中でも、人間を対象とする臨床研究を産学連携で行う場合に考慮を要すべきは、他の領域の産学連携研究とは異なり、臨床研究の対象・被験者として健常人、患者などの参加が不可欠であるという点です。従って産学連携より臨床研究に携わる者には、一方において研究者として資金及び利益提供者である製薬企業などに対する義務が発生し、他方においては被験者の生命の安全、人権擁護をはかる職業上の義務が存在します。同一人におけるこのような2つの義務の存在は、単に形式的のみならず、時には実質的にも相反し、対立する場面が生じます。1人の研究者をめぐって発生するこのような義務の衝突、利害関係の対立・抵触関係がいわゆるConflicts Of Interest(COI;利益相反と和訳されている)と呼ばれる状態です。換言すれば産学連携で行われる臨床研究は形式的に見るかぎり、ほとんどCOIの状態にあると言えます。
- Q2 臨床研究とは漠然としていますが、具体的にはどこまでの研究をいうのでしょうか?
- A2 「臨床研究」とは、医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解ならびに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学系研究であって、ヒトを対象とするもののことです。ヒトを対象とする医学系研究には、個人を特定できるヒト由来の試料および個人を特定できるデータの研究を含むものとしています。個人を特定できる試料またはデータに当たるかどうかは厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」(2008年7月31日全部改訂)に定めるところによります。
- Q3 他の学会では、臨床研究のCOI自己申告はどのようになっているのでしょうか?
- A3 国内外の多くの学会や雑誌では、演題発表時および学術雑誌へ発表する場合にCOI自己申告書の開示が義務付けられています。
- Q4 COIマネージメントは本来、研究者が所属する機関・施設で行うものと理解していましたが、本学会のCOIマネージメント(管理)とはどのようなものですか?
- A4 会員の多くは所属施設や機関で臨床研究を実施し、得られた成果を各専門学会で発表します。産学連携にて行われる臨床研究の実施とその発表という2つのステップがあり、それぞれにおいて透明性、公明性が求められることから、所属機関・施設だけでなく、学会発表においてもCOI状態の開示が求められます。所属機関・施設に対しては、当該臨床研究に携わる研究者全員が実施計画書と同時にCOI自己申告書を施設長へ提出し、当該施設においてCOIマネージメントを受けることが求められております(文部科学省・臨床研究の倫理と利益相反に関する検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」)。一方、本学会のCOIに関する指針は、本学会が行う全ての事業を対象に、COI状態を自己申告によって開示させ、これにより本学会関係者の社会的・倫理的立場や責務を明確にすることを目的としております。
- Q5 産学連携による臨床研究や臨床試験を行う上で、COIの観点から研究者(本学会員)が遵守すべきこととは何ですか?
- A5 臨床研究や臨床試験に携わる研究者としての社会的な義務と医療専門家としての義務が同一研究者に課せられるが、これら2つの義務の対立が現実化した場合、医療専門職にある研究者は、対象である被験者の人権擁護者としての立場を最優先し、被験者の利益のために最善を尽くすべきことは当然と考えられています。従って、資金提供者の利益のために、またさらに自分の利益維持のために研究の方法、データの解析、結果の解釈を歪めるようなことが、絶対あってはならないし、社会的にも許されない行為と言えます。 よって、研究者(本学会員)としては、透明性の実現に努めるとともに、社会から疑念を受けないように常に配慮することが求められます。
- Q6 医学研究を行ったり、その成果を発表したりする場合、企業からの資金提供が悪いような印象を受けますが…
- A6 そうではありません。国策として科学技術基本計画が推進されており、企業から正当な報酬を受けることや、医学研究の推進に向けて資金援助をしてもらうこと自体や貰うこと自体には全く問題はありません。それらの事実をきちんと大学などの施設や学会等が透明性を確保して正確に把握しておくことが重要であり、産学連携による臨床研究の実施に疑義があると指摘され、研究者が誹謗中傷された時に、あらかじめ自己申告により正しい情報が既に開示されておれば、学会として社会への説明責任を果たし、適切に対応することが可能となります。
- Q7 COI状態の開示を義務付けることは、企業との産学連携活動を阻害することにつながるのではないでしょうか?
- A7 COI状態の開示は、あくまで自己申告に基づくものであり、産学連携活動を規制したり、個人収入を減じるための取り組みをしようとするものではありません。臨床研究を発展させるには、産学連携を透明性、公明性を持って推進することが重要と考えており、適切に臨床研究が行われ、その成果が適正に公表されることが、現場での医療改善に結びつくと考えられています。
- Q8 COI指針(COIをマネージメントする指針)を策定すれば、法的責任は回避できますか?
- A8 本指針は、本学会の事業活動を公明性、中立性を担保・実施するために制定したもので、研究者個々人に何らかの法的責任が発生した場合にそれを回避するために制定したものではありません。具体的には、申告内容の真偽、申告外の利益取得、申告書の保管期限経過後に発生した問題等においては法的責任を問われる可能性はあります。一般的に言えることですが、学会の指針や規則・細則には、その上位にある「法令」の適用を回避させる効力がないことをご理解下さい。
2.日本小児救急医学会のCOIに関する指針に関して
- Q1 COI指針の中で学会発表、講演会、セミナー、市民公開講座、論文投稿以外に対象となる学会の事業と書かれている場合がありますが、他にはどのような事業があるのでしょうか?
- A1 政府機関(厚生労働省など)や日本医師会などへの建議、諮問に対する答申、診療に関するマニュアルやガイドラインの作成などが含まれます。通常、それらの事業活動に関わるのは理事や委員個人ですので、これらの方々のCOI状態の開示と必要に応じた公開が求められます。
- Q2 申告すべき事項として、NPO法人や財団などの法人組織は、助成金などの研究費を受けた場合の対象として含まれるのでしょうか?
- A2 申告対象として、「企業・法人組織、営利を目的とする団体」と明記しており、本学会の事業に関連する企業だけでなく、公益性の高い財団などの法人も当然含まれますので、本学会が決定している基準額を超えて受けている場合には自己申告の対象となります。
- Q3 COI指針に記載されている開示と公開の違いは?
- A3 本指針で言うところの開示は、「本学会において発表する会員が学会事務局、理事、評議員、作業部会委員、会員、学会参加者、学会誌購読者に対して自らのCOI状態に関する情報を提供すること」と定義します。公開は「本学会に関係しない外部の人々や、社会一般の人々に対してCOI情報を提供すること」と定義します。自己申告されたCOI情報のどの範囲を開示として扱い、どこまで公開するかは、対象者および対象事業によって異なります。 本学会での発表や学会誌への投稿においては、その自己申告範囲は所定の様式に従い、当該発表および論文に関連した企業・団体と発表者・投稿者との間の関係に限られます。また、申告行為自体は開示という解釈です。一方、学会役員などについてはより詳細なCOI状態の自己申告が要求されます。また、学会役員などについては、一親等の親族および収入・財産を共有する者についてもCOI状態を申告する義務が課せられています。この自己申告は本学会に対して開示されるものでありますが、公開される可能性があることを宣誓して提出します。しかし、自己申告された内容を、実際に全て公開することは、個人情報保護法の観点から許されるべきことではなく、社会的・法的に公開が求められた場合には、COI委員会で議論し、理事会が公開するべき範囲を顧問弁護士と相談して決定し、これを公開することになります。
- Q4 本学会に関連のある雑誌に座談会形式の記事が掲載されることがありますが、参加者はCOIの申告が必要でしょうか?
- A4 座談会は診療面、特に診断、治療の話がなされ、読者に影響力がありますので、雑誌に掲載される場合にはCOI申告が必要です。
- Q5 筆頭著者以外の共著者に開示すべきCOIの申告が発生した場合、雑誌記載方法はどのようにすべきですか?
- A5 所定の様式に従い、発表論文末尾の部分に項目別に記載されています。
- Q6 本学会の学会誌や刊行物は、“投稿時に過去1年間の利益相反状態を申告しなくてはならない”となっていますが、投稿に2~3年かけているケースも多く、その為海外では2~3年が主流となっているようです。学会誌や刊行物に関しては、海外の主流に合わせた“2年”とするか“投稿時から遡って発表内容に関係する”とした方が他学会にも世間的にも問題が起きないと思いますがいかがでしょうか?
- A6 最初の試行期間である2年間は過去1年とし、完全施行の時点で、2年とか、3年に見直しをして行くのが良いとの考えです。その時点ではCOI申告のシステムがかなり周知され、会員のCOI情報も蓄積されてきますので完全実施が容易になっていると思われます。
- Q7 本学会の学会誌や刊行物へのCOI申告に関する取り決めや見直しはCOI委員会、編集委員会のどちらで対応するのですか?
- A7 COI委員会と雑誌編集委員会とがそれぞれ関係する部分を協議して取り決めや見直しを行い、最終的には、理事会等で承認され実施されることになります。
- Q8 本学会で策定されたCOI指針が施行された場合、その後に改定はなされないのですか?
- A8 COI指針は、法律ではなく、社会の常識や良識によって判断されるものであり、当然、社会の通念や倫理感が変化すれば、判断基準も変わってきますので、随時改定して行くことが求められます。本学会のCOI指針と細則も、原則、施行数年後に見直しを図っていくことが大切です。
- Q9 COI委員会の構成はどのようになっていますか?
- A9 委員会は、委員長、委員若干名から構成されます。本学会事務局からは、事務管理責任者が加わり、審査の仕分けや事務的な補助を行います。もちろん、COI委員会委員と事務管理責任者の全員には守秘義務が課せられることは言うまでもありません。
- Q10 役員等のCOI自己申告書は提出された後、どのように取り扱われるのでしょうか?
- A10 提出された自己申告書は、事務的には個人情報を含む非公開の書類として学会事務局にて厳重に保管されます。
- Q11 他の学会でCOI自己申告を行った場合、本学会における発表でもまた、新たな自己申告を行わなければならないのでしょうか?
- A11 発表学会ごとに自己申告を行う必要があります。
3.COI申告とその申告書提出に関する質問
- Q1 COI自己申告書を開示することにより、どのようなメリットがあるのですか?
- A1 企業などからの金銭授受にかかるCOI問題は、マスコミからの指摘や所属施設内部からの告発による場合が多いのが現状です。COI申告書の記載に虚偽がなければ、学会は会員を誹謗中傷から守ることができます。しかし、学会発表や学会誌での発表において、COI自己申告書の開示内容に意図的な虚偽の記載が明らかになれば、会員を守ることはできず、むしろ、違反者として措置を行うことになります。
- Q2 COI自己申告書を提出する意味が理解できません。研究者の収入を開示するのは、個人情報保護法に違反するのではないでしょうか?
- A2 臨床研究を行う研究者や医療人の使命は、疾患の診断、治療、予防法などを開発し、できるだけ早く患者さんの所に届けることですが、医学研究において企業との産学連携活動が必要となることがあります。当然、医学研究が活発な研究者には公的にも私的にも研究費や講演料、株式収入などが入ってくる可能性があります。そのような利害が増えると、また、その額があるレベルを超えると社会からの疑義や不信が発せられやすくなります。そのためには組織として、各研究者のCOI状態を適切に把握して、透明性に努め、深刻な状態にならないようにマネージメントすることが求められています。
- Q3 配偶者や一親等の親族、収入・財産を共有するもののCOI状態まで申告するように定めていますが、これらの人が開示・公開を拒んだら、どうすべきですか?
- A3 配偶者などのCOI状態が、申告者の学会事業活動に強く影響するのは一般に理解されているところです。学会発表、論文投稿や学会役員等の就任時には、COI状態の開示・公開が求められます。ベンチャー企業の立ち上げや運営において配偶者を含めて親族が関わる場合も想定され、配偶者などのCOI状態が深刻な結果、社会的・法的問題が生じた時に、これらを自己申告されていなかった当該申告者を、学会としては、残念ながら社会の批判から守ることができません。また、学会は当該申告者を指針違反者として扱い、本指針で定められた措置を取らざるを得ません。以上の点を踏まえて配偶者や一親等の親族に理解を求めて情報提供をお願いすることが大切です。
- Q4 COI自己申告書への記載は、全て記載すべきですか?
- A4 自己申告書の各項目に沿ってある基準額が設定されていますので、「有る」、「無し」のチェックを全ての項目について行い、「有る」場合には、企業名を記載すべきです。
- Q5 COI自己申告書の各項目ごとの基準額は、どのように決められているのですか?
- A5 平成18年に出された文科省検討班「臨床研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」と平成20年度の「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針」、並びに他学会の基準を参考にして項目の設定並びに基準額が設定されています。本学会としては説明責任を果たせるように基準額を設定しました。
- Q6 株の保有やその他の報酬は、臨床研究に関連した企業・団体だけを申告するのですか?
- A6 学会発表者や論文投稿者については、当該医学研究に関連する企業・団体のものに限定されます。学会役員などについては、本学会が行う事業に関連する企業・団体に限定して自己申告していただくことになります。
- Q7 私はある生物製剤に関する特許権を1,000万円で製薬会社に譲渡しました。これは特許権使用料には当たらないと解釈して、申告しなくてよいのでしょうか。
- A7 特許権の譲渡についても申告が必要です。
- Q8 私は本学会の会員ですが、製薬会社の株を30万円相当分を持っています。また、先日、製薬会社のが主催するセミナーで講演し、10万円の講演料を得ました。これら全てを自己申告しなければいけませんか?また、収入がある度に自己申告するのですか?
- A8 具体的な申告の時期、申告方法、基準額は対象活動内容や対象者会員の立場により異なり、運用規則に示されています。会員の申告時期は、学会発表時、論文投稿時に、発表する研究内容に関係する企業・団体とのCOI状態を自己申告することが義務付けられています。一方、役員などの場合には、就任時と、その後1年に1回の自己申告が必要です。株は1年間の利益が100万円以上の場合、講演料は1企業につき年間50万円などの基準が運用規則で定められています。
- Q9 私は製薬会社と関係しない出版社からの原稿料が50万円を超えますが、会員としての申告が必要でしょうか?
- A9 原稿料で申告が必要なのは、原稿料の支払元が製薬会社や医療器具メーカーなどである場合です。しかし、原稿料が出版社から支払われたとしても、関係する製薬会社などがスポンサーとして関係している場合には基準額以上であれば申告する必要があります。
- Q10 ある製薬企業から、私の勤める県立病院に奨学寄附金400万円の入金があり、研究担当者名は私になっています。実際には、病院全体の研究費として多くの人が使用しており、物品を購入する場合、病院事務を通して経理がされています。このような奨学寄附金も私のCOI状態として申告すべきでしょうか?
- A10 奨学寄付金(奨励寄付金)については,1つの企業,団体から,1名の研究責任者に支払われた研究費が年間200万円を超える場合に申告する必要があります。実際の研究費の使用者が誰であるかに関わらず、研究責任者のCOIとして申告すると良いでしょう。これは、研究責任者のコントロールの割合が強いと一般から見られているためです。ただし、学会発表、論文投稿の研究内容が、奨学寄附金を納入した企業・団体と関係のない場合には開示する必要はありません。一方、役員などは本学会が行う事業に関連する企業・団体に関わるもの全てが自己申告の対象となり、COI状態の開示を求められます。
- Q11 私の所属機関では、企業からの奨学寄附金や治験の入金額の10%が事務経費として差し引かれます。このため、企業から300万円の奨学寄附金をもらっても、研究者が受け取るのは270万円です。この場合、奨学金の受け入れは、270万円と考えてよろしいでしょうか?
- A11 申告する奨学金の基準額は所属機関の事務経費を控除した額でなく、企業から入金された全額をもとに記載してください。従って、この例の場合、奨学金額は300万円と判定されます。
- Q12 所属する大学の教授や准教授が奨学寄付金(奨励寄付金)を受けている場合、助教としての私はどう対応すべきでしょうか?
- A12 本学会での研究発表については、申告者が所属する研究室単位が同じであるとか、研究費の使途を一にしている場合、COI状態にあるとして基準額を超えていれば、申告してください。役員の場合も同様です。しかし、同じ部局内の研究者が全く独立して研究をしている場合には必要はありません。
- Q13 寄附講座の多くは企業の寄附資金によって運営されておりますが、寄附講座所属の教員や職員についてはCOI申告をどのように行うのですか?
- A13 寄附講座はCOIマネージメントにおいて重要である場合があることから、所属する教員などは所定の様式に従い申告する必要があります。
- Q14 「研究とは直接関係のない、その他の報酬」を申告するように義務付けられていますが、製薬会社が提供するテレビ番組のクイズで海外旅行が当たっても申告するのですか?
- A14 クイズや抽選で当たったものは景品であって報酬ではありません。申告が義務付けられているのは「報酬」であり、「報酬」とはなんらかの労力に対する見返りとして支払われるものです。従って、景品は申告対象ではありません。自己申告に当たる例としては、ある医師が特定の薬をよく処方することから、その薬を販売する企業が謝礼の意味でUSBフラッシュメモリーを医師に渡すことなどが該当します。極端な場合には贈賄行為となり刑事罰の対象となるケースも想定され、本指針で扱うものではありません。
- Q15 私は本学会が主催する若手向け教育セミナー学会時に開催される一般市民向け講演会での講演を依頼されることがあります。このような場合もCOI状態を開示しなければならないのでしょうか?
- A15 本学会の事業活動である教育セミナーや一般市民向け講演会などは、多くの場合その分野の専門家が演者となります。従って、これを受講する者への影響は大きいことから、所定の様式に従い、COI状態を発表スライド中に開示することが必要です。
- Q16 本学会のCOI自己申告書にある基準は、今後変わらないのでしょうか?
- A16 申告するための項目とか基準額等は、当然、社会的な要因や時代の変化に伴い考え方や社会からの見方も変化していくことが予想され、その時代にあった基準に変更していくことが想定されます。本学会の指針にも「本指針は、理事会の承認を得て、変更することができる」と記載されています。
- Q17 本学会で策定されるCOI指針は本学会に関連して地方で開催される研究会にも適用されるか?
- A17 本学会の事業として各地で開催されている研究会などにおける発表も本指針運用規則が適用されます。
- Q18 ベンチャー企業や大学、研究機関などとの共同研究(まだ医薬品や医療機器としての認可も利益もない状態)による成果を学会誌に発表する場合、COI申告について注意すべき点を教えてください。
- A18 発表する場合、共同発表者のCOIがあるか否かをあらかじめ確認し、すべての著者のCOI状態について申告する義務と責任が筆頭著者にあります。従って、発表に際しては個々の発表者のCOI状態をあらかじめ確認しておくことが大切です。もし、COI申告違反が共同発表者のどなたかに発生した場合、筆頭著者が罰則規定に従って措置を受けることになりますので注意してください。
3-1. 会員の講演発表、雑誌発表などにおけるCOI申告について
- Q1 日本小児救急医学会で演題発表をしようとすれば、COI状態の報告について具体的に、何をすればいいのでしょうか?
- A1 本学会での発表については、筆頭発表者は発表演題に関係する企業などとのCOI状態を開示することが必要です。開示は当該発表演題に関連した企業との金銭的なCOI状態に限定されます。臨床的に影響力のある医学研究成果については論文として投稿されますので、この段階で筆頭著者のみならず、共著者全員のCOI状態を開示していただくことになります。
- Q2 何故、本学会の発表では、筆頭発表者だけが自己申告書の対象なのですか?
- A2 学会によっては、筆頭発表者だけでなく、すべての連名発表者も申告対象としている場合もあります。今回、初めての取り組みであり、筆頭発表者だけとしていますが、将来的には連名発表者全員まで拡大することが多いといえます。
- Q3 営利企業や団体などから示された基準をはるかに超えるCOI状態があった場合、学術講演会の発表はできないのですか?
- A3 高額の個人収入を得ているからと言って、講演ができないことはありません。発表の時に、適切にCOI状態を自ら開示することによって、その講演内容の評価は聴衆サイドに判断を委ねることになります。当然、当該の講演者は、発表内容の中立性、公明性が求められることとなり、このような対応がCOIマネージメントの基本であると理解してください。
- Q4 抄録をwebsiteで登録する時に提出するCOI自己申告書はどのように扱われるのですか?
- A4 COI自己申告書は個人情報が多く含まれていますので、学会事務局にて厳重に保管され、情報が関係者以外に漏れることはありません。
- Q5 学会で演題発表する場合、いつ筆頭発表者のCOI状態を申告するのですか?
- A5 発表する演題の抄録をwebsiteにて登録する時に、COI自己申告書に必要事項を全て記入して頂かないと演題登録ができない仕組みとなります。
- Q6 非会員が本学会の特別講演、シンポジウムなどに招待された場合、本指針は適用されますか?
- A6 本学会の事業に参加することから、会員の場合と同様に、発表時にCOI状態の開示が求められます
- Q7 学術講演会などの昼食時や、夕方に開催される企業主催のランチョンセミナー、イブニングセミナー(シンポジウム)などが開催される場合、発表者には本学会の本COI指針と運用規則が適用されますか?
- A7 企業主催のランチョンセミナーやイブニングセミナーなどは学会員を対象に行われることから、発表者はCOI状態についてスライドを用いて開示する義務を負うことになります。
- Q8 本学会事務局に膨大な量の個人情報が蓄積されることになりますが、それらはいつまで保管されますか?
- A8 雑誌や学会での発表者のCOI情報は、論文中や発表時にスライドまたはポスターにて開示されることで完結します。学会発表のための抄録登録時あるいは本 学会雑誌への論文投稿時に提出されるCOI自己申告書は提出の日から3年間、理事長の監督下、利益相反委員会により厳重に管理保管され、その後は廃棄されます。
- Q9 本学会が発刊する雑誌への投稿論文で明らかにするCOI状態の期間は、いつからいつまでですか?
- A9 運用規則では、投稿時から遡って1年と規定されています。投稿日が7月10日の場合は、前年の7月11日からの1年間に発生した事項について自己申告してください。論文がreviseとなった場合は、投稿日の前年の7月1日から、最終版の投稿論文を送付した日までに発生した事項について自己申告書を改訂して自己申告してください。
3-2. 会員の講演発表、雑誌発表などにおけるCOI申告について
- Q1 役員(理事長、副理事長、理事、監事)、学術集会会長、次期会長、各種委員会の全ての委員長、特定の委員(編集委員、COI委員、ガイドライン作成委員)、事務局職員などがCOI申告書を提出する場合、対象となる期間はいつからいつまでになるのでしょうか?
- A1 税務署への自己申告の対象となる期間は、毎年1月1日から12月末となっており、会員自身がデータとして整理していると思われるので、本学会も就任するに際して過去3年までを対象期間としてCOI状態の申告を義務付けています。尚、事務局職員は、入職時に過去1年を対象期間とします。
- Q2 役員などで理事長宛にCOI自己申告書を提出した後に既定の基準を超える個人的な収入があった場合、どのように対応すべきでしょうか?
- A2 既に提出しているCOI自己申告書への追加・修正という形で、COI基準を超えた日から6週間以内に報告すべきです。あくまで、自己申告制ですので、常日頃から会員自らが各自のCOI状態をチェックし記録しておくことが肝要です。
- Q3 本学会の場合は、会長、理事長、理事・監事の就任日、委員長就任日、委員就任日が、それぞれ異なっています。同一人物が理事となり、ある委員会の委員長となり、また別の特定委員会委員を兼ねる場合は、3回も自己申告書を提出する必要がありますか?
- A3 理事、委員長、特定委員会委員などを兼任される場合は、就任が最も早いものについて、就任時に所定の様式に従ったCOI自己申告の提出で良いです。その後、委員長や特定委員会委員になっても、個別に申告する必要はありません。ただし、例えば、理事就任後、ある委員会の委員長に就任する間に、製薬会社から奨学寄附金1,000万円を獲得した場合には、「在任中に新たなCOI状態が発生した場合」として、6週間以内に報告する義務を負うものと判断されます。新たに発生したCOI状態の分のみ所定の様式を用いて申告することが必要です。
- Q4 役員の場合、企業からの金銭授受が基準額以上であれば、COI自己申告書に全て記載すべきですか?
- A4 全ての企業名を記載する必要があります。
- Q5 理事、各種委員会委員長、委員などは、COI自己申告書をいつ提出するのでしょうか?
- A5就任した時点で自己申告書を提出する義務を負います。申告がない場合には、就任は承認されません。
- Q6 役員などが自己申告書提出後に、新たに基準額を超えるCOI状態が発生した場合はどのように対応すべきですか?
- A6 新たに発生した時点から、6週間以内に修正した自己申告書を理事長宛に提出することとなります。
- Q7 ある特定の企業A社から、会員が講演料、寄附金などで高額の収入を得ている場合、A社の薬剤の診療ガイドラインを策定する委員会の委員長になることができるのでしょうか?
- A7 社会的な視点からその収入額が非常に高いと考えられる場合には、責任医師になるべきでなく、分担医師として委員に入ることは可能です。しかし、深刻な COI状態にあると思われる場合には、深刻な状態を緩和するための措置(ピア・レビューの徹底、分担医師の辞退、報告、監査など)を取ることも一つの解決策になると考えられます。
- Q8 ある保険会社の顧問をしているが、これも自己申告するのでしょうか?
- A8 本学会の事業活動を担う役員の場合、当該保険会社との間にCOI状態が発生しないと考えられるのであれば、申告の必要はありません。当該の保険会社に関係する事業を扱う委員会委員長に就任する場合にはマネージメントが必要になる可能性があり、そのような場合に自己申告が求められます。
4. COIマネージメント(管理)の意義と実際について
- Q1 関連企業などから多額の報酬や助成金を得ている研究者は重大なCOI状態にあると考えられるが、具体的にどのようなマネージメントがなされるべきですか?
- A1 重大なCOI状態が予想される研究者であっても、そのような状態にあることを社会に対して適正かつ明確に開示することが大切です。また、臨床研究・試験に参加する健常者、患者などの被験者が、そのことを十分理解し、熟知したうえで参加し、かつ研究者が研究の方法、データの解析、結果の解釈などを公正に行った場合には、そのような臨床研究も、正当な研究として社会的に容認される環境を作っていくことが求められます。
- Q2 COIマネージメントが必要な役員(理事、委員など)とは具体的にどのような役を担う時ですか?
- A2 役員(理事長、副理事長、理事、監事)、学術集会会長、次期会長、各種委員会の全ての委員長、特定の委員(編集委員、COI委員、ガイドライン作成委員)、事務局職員に就任する場合があたります。COI委員会は役員の自己申告書に記載されている企業などとの利害関係について審議し、特に委員長として活躍していただく場合に問題がないかどうかの検討は大切です。
- Q3 製薬企業から多額の研究費や奨学寄附金を貰っていれば、自分の専門領域で特殊な治療に関する臨床研究を行う場合、Principal Investigator(PI;責任医師)にはなれないのでしょうか?
- A3 臨床研究においては、「余人をもって代え難し」ということがしばしばあります。もちろん、全ての責任医師を排除するものではありません。産学連携による臨床研究の推進が第一でありますので、どのように深刻なCOI状態をマネージメントすれば、可能かという点をまず考えることが大切です。方法として、分担医師になってもらうか、或いは、責任医師として担当してもらい、定期的に報告書の提出とか、ピア・レビューを徹底する、ヒアリングを行うなどの方策を使って対応することも可能です。本学会として説明責任を果たせるようにしておくことが求められます。
- Q4 学術集会などで、発表者が基準以上のCOI状態があるにも関わらず、COI開示を適切にしなかったり、虚偽の申告をしていた会員が、社会から指摘された場合、学会はどう対応するのでしょうか?
- A4 学会発表で、もし開示しなくても、それですぐ措置を取るということはありません。しかし、発表者のCOI状態が適切に開示されずに深刻な社会問題となり、当該会員が誹謗中傷された場合に、学会としては発表者を守る立場から社会へ向けての説明責任を果たせない時には、個人の問題として対応していただくことになります。一方、そのような事態が分科会の社会的な信頼性とか、権威を傷つける結果になった場合には学会としてそれに応じた措置・処分を別途規約に従い対応していくことになると思われます。
- Q5 会員から、特定の役員について、企業・団体から提供される寄附金額はいくらかとの問い合わせがあった場合、その詳細を開示すべきでしょうか?
- A5 本学会としての対応としては、COI指針細則に規定されている基準額以上の寄附金があったかどうかの情報のみ提供し、金額については原則として開示しません。問題が生じる場合には、理事会で最終判断を行うことが望ましいと思われます。
- Q6 非会員(マスコミなど)から、特定の役員のCOI自己申告書の開示請求が法的になされた場合、どう対応するのでしょうか?
- A6 本学会としては、役員の個人情報の保護を基本に、対応については理事会で最終判断を行います。事例によっては、顧問弁護士と相談の上、法的に対応することも一つの方策であります。
- Q7 ある役員が自己申告書の記載内容において虚偽の記載により、本学会の社会的な信頼性を著しく損なった場合、どのような対応を行うべきか?
- A7 理事長は理事会の審議を図ると共に、調査委員会を立ち上げて事実関係を含めての真相解明を行うことができます。その結果、自己申告違反が検証されれば、その程度に応じて当該会員の処分措置を行うことができます。